ずさんな契約書類


このケースの問題点は、契約の内容にあります。
契約は当事者双方の合意によるもので、その内容はまず契約書で判断します。
契約の内容がはっきりしていないと、「契約を履行した、しない」などの論争をしても判断の基準がなく、不毛の議論になりかねませ

ん。
ひどい場合は、図面が添付されていなかったり、図面はあっても単なる見取図程度で仕様書がないとか、単価が「坪当たりいくら」と

なっていて工事内容がわからないというケースもあります。
これでは、契約履行の内容や程度の是非が判断できません。
契約書は必ず内容を確かめて、暖昧なところを明らかにしてから押印してください。

工事が大幅に遅れたうえ、欠陥だらけだった


Aさんは事故で車いす生活を余儀なくされたため、六年前に建てた自宅を改築することにしました。
「できれば、寒くなる前に新しい家に住みたい」という希望で、短期間で工事を行なう必要があり、それができるというO社に工事を

頼むことになったのです。
そして、設計者と打合せをし、変更後の図面はあとで差し替えて契約書に添付するということで請負契約書に押印しました。
その後、追加工事や細かい修正があり、工事内容はいくらか変わりました。
そのためもあって、工事は大幅に遅れ、年末になってしまいました。
Aさんは待ちきれず、「あまり寒くならないうちに」と、工事がまだ終わっていない住宅に入居したのです。
ところが、入居すると、雨漏りはするし、工事が不具合なところもかなり目立ちます。
「これは欠陥住宅だ」と考えたAさんは、工事が完了しても、工事代金の残額の支払いを見合わせていました。
すると、工事会社が「残金を払え」と訴訟を起こしてきたのです。
これに対して、Aさんも、反対に「工事の遅れと瑕疵の存在」を理由に損害賠償の反訴を起こしました。
O杜の請求書を見ると、「見積りに用いた原設計図にはあっても見積書にはないもの」や「変更図では削除されても見積書に残ってい

るもの」がありました。
一方、設計者は契約交渉の過程を詳細にメモしていて、原設計図と契約図面との相違を即座に説明できました。
その結果、0社が請求している追加工事代金には、「原設計図にのっていて契約図面にはないもの」「変更したのに契約図面で修正さ

れていないもの」「修正されているが見積書が修正されていないもの」などが相当含まれていることが明らかになったのです。
建て主側にすれば、契約書に図面を添付している以上、その図面とその後の修正どおりに工事をしてもらわなくては、契約の履行には

なりません。
「見積書に記載がないのは、見積り漏れにすぎない」という見解になります。
結局、この訴訟は、裁判官の調整で「請求金額のごく一部を払う」ことで和解となりました。

内容はきちんと確かめる


ここでは、実際にあったトラブルを例にご説明します。